~知床のヒグマの例~
世界自然遺産地域である知床国立公園は、世界有数のヒグマの生息地であり、年間約170万人の観光客が訪れます。そのため、国立公園を訪れた観光客の前にヒグマが姿を現すこともめずらしくありません。“ヒグマを近くで見たい・撮りたい”という欲求から、一部の観光客やカメラマンによるヒグマに対する過度な接近や餌やり等が後を絶ちません。
本来ヒグマは人を警戒して近づこうとはしませんが、人による過度な接近や餌やり等を繰り返すことにより、人を恐れない“人なれ”ヒグマへと変わってしまいます。人なれしたヒグマは、自ら人や車両に近づいたり、人の荷物を物色したりするようになり、人身事故や物理的な被害を起こす可能性が高い「問題グマ」と判断されます。そして、人間への危害を及ぼすおそれが高い場合には、やむなく補殺されます。
環境省など関係行政機関・地域団体が連携して、ヒグマを人なれさせる行為を止めてもらうように、2012年から「知床ヒグマえさやり禁止キャンペーン」、2020年から「知床ディスタンス!キャンペーン」を始め、注意喚起や普及啓発を継続して行ってきました。人が野生動物に対してとるべき距離を測ることができるディスタンスカードを配布しています。
しかし、注意に従わない観光客やカメラマンが少なくありません。
こうした状況を踏まえ、自然公園法が改正され、令和4年4月1日から、国立公園又は国定公園の特別地域等において、『野生動物の生態に影響を及ぼし公園利用に支障を及ぼすおそれのある行為』として、野生動物への著しい接近等が規制されることになりました。
環境省職員の中止指示に従わず、これらの行為をやめない場合には、30万円以下の罰金が科される場合があります。
規制対象となった行為※
※ヒグマに限らず、野生動物(鳥類又は哺乳類)に対する同様の行為は、規制対象になる可能性があります。ただし、行政機関等が事業として行う希少種保全のための給餌など、社会通念上、正当な理由がある場合には規制対象とはなりません。